人手不足で増える人事制度の見直し

厚生労働省が1月に発表した2017年の平均有効求人倍率は、前年度0.14ポイント上昇の1.5倍になりました。これは高度成長期ピークで戦後最高だった1973年の1.76倍の水準に迫る44年ぶりの高水準になりました。昨年12月の有効求人倍率は、1.59倍とバブル期絶頂の1990年7月全国平均1.46倍を大きく超えています。厚生労働省雇用政策課では、経済状況、雇用環境の改善でこの傾向は当面続くとみています。

将来の人材確保に大きな影を落としているのが、急激に減少する労働力人口の減少です。2015年の高齢化比率27%が、2030年30%に達し、生産年齢人口(15歳~64歳)は、7592万人(人口比60.6%)から6343万人(54.3%)と減少していきます。人口構造の変化は如何とも仕方ないことですが、減り続ける労働力人口の助けとなるのが働く高齢者といわれています。
帝国データーバンクが昨年4月に行った調査では、人材確保のために行う取り組みとして約半数の企業が賃金体系の見直しを挙げています。その他として労働時間の見直しなどの就業体制の充実、休暇などの福利厚生制度の充実など人事制度のかかわる施策がベスト5のなか3つ入っています。2017年中小企業白書(中小企業庁)では、人材の定着や育成のために中小企業が有効だとする取り組みでは、「職場環境・人間関係の配慮」に関することが最も成功事例が多かったようです。取り組む企業は多いものの成果が低いとされるのが「能力や適性に応じた昇給・昇進」や「成果や業務内容に応じた人事評価」でした

賃金体系を見直した企業に関しての調査結果では、大企業より100人未満の企業が多いことに気づかれると思います。ほとんどの業界で賃金体系を見直してでも人材確保の意向が強い結果となりましたが、必ずしも増員のための施策ではないことが示唆されています。人材の定着と効果的な育成などが重視され、安定的な採用に向けた多様な働き方の導入も重要なポイントとなっています。「同一労働同一賃金による制度改定」や「多様な働き方を受容する社内環境の整備」「労働時間の短縮など生産性に基づく評価」など政府の進める「働き方改革」は、法律の施行にかかわらず企業の人事制度の見直しととらえることができます。