ワークシェアリングと働き方改革

日本の少子高齢化対策や女性の社会進出を後押しをすることも働き方改革施策の一つですが、国内の雇用者数を増やして、一人当たりの仕事量を減らすワークシェアリングも重要な施策です。コロナ禍の現状等様々な要因からワークシェアリングを導入する企業が増えています。今まで育ててきた社員を手放したくない企業と人員削減や雇用の打ち切りなどされたくない従業員の双方がお互い維持できる制度として考えられているのが雇用維持型ワークシェアリングです。
ワークシェアリングの背景として「少子高齢化による生産年齢人口の減少、育児や介護の両立など、働く人のニーズの多様化などの状況に直面しており、こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を十分に発揮できる環境を作ることが重要な課題となっている」と厚労省では説明・明記しています。1980年代、オランダでのワークシェアリングの成功事例もあり、ワークライフバランス、クオリティライフの実現にも重要であることから、今後導入する企業が増えるといわれています。
厚労省では雇用機会、労働時間、賃金の観点からワークシェアリングを4つのタイプに分けていますが、どのタイプでも一定の雇用量・労働量を分かち合うことは共通しています。
①雇用維持型(緊急避難型)
②雇用維持型(中高齢対策)
③雇用創出型
④多様就業対応型
ワークシェアリングの4タイプのうち雇用維持型(緊急避難型)は、今回の新型コロナによる景況の悪化に伴い、緊急避難的な労働時間の短縮を行った企業が多かったと思います。その他のタイプにおいては、就業の多様化に対応することが重要であることと、業務の見直しや収益性の確保に向けた制度設計が必要になります。

ワークシェアリング制度の導入については、「働き方改革」で進める「ジョブ型」の仕事の進め方を基本におく必要があります。現在の仕事の流れや方法についての理解から、業務をフローチャート化して現状を把握し、無駄な仕事や不要な仕事がないか洗い出しをする必要があります。現在の収益に貢献する中核業務を中心にワークシェアリングが可能な業務を探し、業務マニュアルを作成していきます。また、収益性の確保を検証する意味でもKPI(重要項目指標)の設定は重要です。
業務の洗い出しは、経営側の決意と従業員を巻き込むことでスムーズにいきます。導入までの流れをなかで従業員の無駄な仕事・不要な仕事の気づきや細かな改善提案などワークシェアリングの必要性について理解してくれるようです。ワークシェアリングを導入することが、自分の収入の減少につながるのでは協力どころか退職を決意することにもなりかねません。業務の見直しで収益を確保する結果、労働時間が減っても時間あたりの単位給与があがる制度を慎重に検討する必要があります。
雇用創出型のワークシェアリングの一環として、短時間労働者が正社員の補助的業務を起こなうことで、本来の専門的業務の幅が広がり結果として収益が上がった実例もあります。高年齢者のワークシェアリング可能な業務を探しマニュアル化することで、特定求職者開発助成金の対象労働者の募集も可能となり企業のメリットも大きいです。今後もコロナ禍の影響による企業の労働量減少も想定されることから、ワークシェアリングのメリットを最大限に活用して制度設計することが大事です。ワークシェアリングの導入が「オランダの奇跡」言われたように、働き方改革には困難も多々ありますが、日本でもコロナ禍後に成功といわれる日がくると信じています。