ハマキョウレックス事件の最高裁判決について

大手物流企業の支店において、有期雇用契約に基づき勤務する契約社員(一般貨物自動車の運転手)が被告会社に対して、労働契約法第20条に基づき、正社員に対して支給される手当の格差の支給を求めた訴訟(ハマキョウレックス事件)で、最高裁は手当の格差は「一部、不合理」とする判断を示しました。
この事案では、二審の大阪高裁において、正社員に支給される7種類の手当のうち「通勤手当」「無事故手当」「作業手当」「給食手当」の不支給は、労働契約法第20条違反に当たると判断し、会社側へ77万円の支払いを命じました。一方、乗務員が全営業日出勤の際に支給される「皆勤手当」、と「住宅手当」については、正社員のみ支給は不合理ではないとしましたが、その後、双方が上告していました。
今回の最高裁判決では、新たに「皆勤手当に格差を設けることは不合理」と判断し、「通勤手当」など4手当については大阪高裁判決を支持し、「皆勤手当」については高裁判決を破棄し、事実関係を精査するため差し戻しとしました。なお、原告側が上告していた「住宅手当」は認められませんでした。この裁判で示された判決は、正規、非正規社員の不合理な待遇格差の解消に向けた指針となり、企業にとっても実務上の見直しを迫られる内容となっています。
労働契約法第20条は、正社員(無期雇用労働者)と非正社員(有期契約労働者)との間で不合理な労働条件の違いを禁止しています。許容される格差の合理性については、「業務の内容や責任の程度」「職務内容や配置の変更の範囲」「その他に事情」の3要素を考慮して判断されるものとしていますが、具体的にどのような格差が不合理かは解釈の問題になっていました。
1審より会社側は、正社員は業務上の転勤可能性や企業の中核を担う人材として登用・育成される立場であり、契約社員は転勤も予定されず、中核を担う人材ではない立場の違いを主張しています。それに対して高裁では、労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより・・」は、有期労働契約者と無期労働契約者との間に労働条件の相違が、期間の定めの有無に関連して生じたものであることを要する趣旨であると解される。と判示しています。契約社員就業規則の関連規定が20条に違反しているとしても正社員就業規則等の適用されることにならないとして、手当個別に検討がされました。今後、正社員と非正社員とで諸手当の支給等で差異を設ける場合、合理的な理由があるか、より慎重な判断が求められます。