がん患者等の就労支援と働き方改革

政府の調査では、労働人口の約3人に1人が何らかの疾病を抱えながら働いており、治療のために離職を余儀なくされる人が多くいます。先日、関連法案の成立をみた働き方改革の議論の中で、そのような人たちの治療と仕事の両立に関わる支援の強化を求められることから、労働政策研究・研修機構では「病気の治療と仕事の両立の関する実態調査を行いこのほど結果を発表しました。
過去5年間の病気治療で罹患時在籍した会社で治療していた疾患で最も多いのが「糖尿病」(34.4%)、続いて「がん」(19.8%)、難病(17.6%)、心疾患(15.9%)となっています。疾患を罹患した当時の退職状況については、「現在も同じ勤務先で勤務を続けている」と回答する人が78.3%と最も割合が高い結果となりました。一方で、「がん」「難病」の疾患者では、「治療に専念するため」「仕事を続ける自信がなくなった」「会社や同僚、仕事関係の人々に迷惑をかけると思った」などの理由から退職を選択する人が多いようです。
「がん」を例とすれば身近な病気でもあり、働くすべての人に無縁ではなく、がんの診断を受けても働き続けられる社会、企業のありかたを考えることこそ「働き方改革」の向かう仕事と家庭生活の両立を実現できる企業ではないかと思います。とは言っても、病名や症状に関する本人とのコミュニケーションの問題や業務遂行能力の低下の問題、仕事をカバーする他の従業員の対応やバランスなどの課題が多々あり、簡単ではないことは確かです。疾病治療の問題だけではなく、介護、育児など休職者対応などにもつながることでもあり、診断から休職の申し出、休職中、復職期、復職後などの企業対応の具体策を検討されることも有意義な議論です。
「働き方改革」の大きな変革は、人基準の人事制度から仕事基準への制度構築にあります。その過程で「同一労働同一賃金」につなげる業務分析と業務改善や役割分担が決定していきますし、「仕事の見える化」により、疾病による療養中の従業員にもテレワークや職務を限定した勤務体制も可能になります。働き方改革は、中小企業の最大の経営資源である「人」と「会社」が、ともにwin-winの関係を構築することを目的としていると私は考えていますので、その会社のあったがん患者等の就労支援は可能です。企業にとって人は宝です。