「職務分析」とは、職務の情報を広く調査・分析し、職務内容を明確化することです。 具体的には、職務に求められている仕事の内容を洗い出したうえで、当該職務の遂行に必要な知識や能力、経験、責任、権限または職務の難易度等を明らかにします。職務記述書」とは、 担当する業務内容や範囲、難易度、必要なスキルなどがまとめられた書類です。欧米では求職時や人事評価の際に使用するのが一般的です。メンバーシップ型の 日本企業で用いられることはあまりありませんでしたが、働き方改革の推進で、企業がジョブ型雇用の転換する上で、近年、重要視されるようになりました。日本の労働生産性が先進7ヵ国中最下位という状態が長い間続いています。理由として一般的には付加価値を生み出す力が弱いこと、一つの仕事に携わる社員数が多く、時間をかけすぎていることなどが挙げられます。

 

 労働生産性は、長時間労働や労働集約で向上するものではありません。生産性を高めるために解決すべき課題は数多くあります。まずは業務を見直すことで無駄をなくし、効率化を推進するなど、できることから労働生産性向上のための取り組みを始めることが大切です。かのドラッカーは著書「マネジメント」の中で、仕事の分析は「何を生産したいか。そのための仕事は何か。効率的かつ生産的に生産するには最終製品はいかなる設計でなければならないか」に答えることから始めなければならないと言っていますが、メンバーシップ型雇用に慣れた日本人はちょっと無理があります。

 

 仕事の分析とは、ドラッカーも基本的に次の四つの段階からなると考えていますが、現在の仕事を構成を押さえて、その後に目指す「仕事の分析」(知識労働)があると考えます。

 

①必要な課業を明確化する。 ②課業をプロセスに統合する。③課業に執務要件を定めて(管理)、一つひとつにツール情報、資材を与える。④作業をまとめて職務とする。これらが現在の職務分析の一連の流れになりますが、実際は最初のステップである課業の洗い出しで混乱するのが、メンバーシップ型の働き方をしている日本人の特徴と考えています。

 

 この職務分析から、職務の目的や目標を定めて、プロセスを再統合して、職責の執務要件(管理)、知識やスキル、ICTなどツールを決定していけば、成果を意識した働き方に変わり、労働生産性も向上していきます。職務を記述していくことはジョブ型雇用に転換するためには必要なことですが、いきなりジョブ型への転換は混乱を招くことになります。多くの業種でタスクを意識したメンバーシップ型を継続しながらも、職務・時間・地域を限定したジョブ型の多様な働き方を混在させた人事制度になるようです。労働者の不足、労働生産性の向上の対策として、「タスク型」の雇用制度の推進が今やるべき優先順位と考えています。