

企業とは、複数の人が意識的に協力し合って、共通の目的を達成するための一形態であり、組織にいる職員の働きを、能率的に配置する仕組みが重要になります。
地方の中小企業の経営環境は、海外を震源とするグローバル化、日本企業を取り巻く経営環境の変化など、日本全体の大きな構造変化に影響されていますが、企業の存在が社会的なものである以上、その環境変化に適応するしか存続の道はありません。
高度化・複雑化した経営環境では、一人での仕事完遂が限界となり、主体的、積極的に仕事をこなす人たちの効率的配置が組織全体の進捗、内容に高い効果を上げるようになってきました。それぞれの得意分野での、分配を可能とする人材能力の配置が不可欠になってきています。
中小企業の人材開発については、以下の4点を意識する必要があります。
1、組織の共通目的の理解、行うべき仕事を自己設定できる能力
2、企業の共通目的を達成するための職務遂行能力の向上
3、他の従業員と協力して目的達成をするための対人能力
4、目的達成の際に起こる問題克服のための問題解決能力
業務標準がある能力開発

「業務標準」は、現在の仕事を遂行する上で必要な知識・技能・職務行動などを指します。前提として、その要件が明文化された職務要件書またはキャリアパスが必要となります。
一般的には、個人の能力開発方法として、仕事中に実際の仕事を上司が部下に対して指導することを「OJT」として行っています。しかし、多くは、経験・能力別の目標を決めずに、与える仕事の達成水準に必要な知識、技能を明確にせず、時系列で発生する仕事の手順を教えることは、単なる「仕事の引継ぎ」で「能力開発」とはいいません。ここから明確にする必要があります。
前述、人材開発の1、2にあたる部分ですが、「業務標準」を明確にし、期待レベルと部下の仕事水準の棚卸しをして、OJTニーズであるギャップを押さえます。目標設定と計画化、優先順位の決定と配分、社内資源の活用、何よりも「ヒト」を育る意識が大事です。企業内で、誰がやっても仕事の質・量を均等にする品質管理は、特にサービス業などの労働集約型(人が介在することで業務が完了する)の事業には必須です。
業務標準がない能力開発

「業務標準」とは、仕事上の役割や職位に与えられた実際の仕事(職務)に対する期待水準をいいます。この能力開発は定型実務に沿った知識と技本技能の習得と、業務遂行能力の獲得・向上を目的としています。
これに対して「業務標準のない能力開発」は、一般的には「コミュニケーション能力」「対人能力」「課題解決能力」などといわれ能力開発ニーズは曖昧、かつ努力と結果の関係も不明確という一見捉えどころがないように見えますが、企画裁量型業務に従事する従業員には必要な能力です。
前述の3、4にあたる部分ですが、現在の業務の遂行能力の知識活用と仕事の課題化、仮説思考などの体験と発見に基づく企業目標の達成を意識した能力開発になります。
「中核人材」など企業の基幹部署担当する従業員には、企業の将来の知財なりうる能力開発として取り組んでほしいです。
この分野へのアプローチは、従業員個々の知見に基づく組織としての能力向上であり、知識の組織への内面化活動、QC活動や5S活動などの共体験、共反省による共通意志形成の学習基盤が有効です。

企業における能力開発は、個人の能力開発を視座とした「人材開発」によるOJT、業務遂行能力の向上、組織基盤の整備などを基軸として、組織での役割認識、課題認識などの関係性を視座とした組織能力の開発・向上が必要な時代になっています。
どのような組織も基本的には、個人が組織の一機能を分担しているので個人が業務品質の水準を達成しているのが最初の能力開発であり、組織全体の品質管理ができていることが最初です。
将来的な企業の在り方を考えた場合、革新・改善の必要性は明確ですが、働く人の人材育成、能力開発いわゆるスキルの向上と組織のプロセス改善に必要な能力開発の取り組みは一体化して進める必要があります。